リハテン

大阪で働く作業療法士。リハビリ関連の知識・書籍の紹介など、思いつくことをアウトプットしてリハビリの天才になることを目指します

注意障害についてまとめた③

この中で注意障害により

 出てくるエピソードはどれでしょう?

 

①両方の手に触ったが、片方にしか知覚できなかった。

②みそ汁の調理中、味噌をすくい、シンクにあったボウルに味噌を入れてしまった。

③ナースコールを何度も押してしまう。

④ごはんを食べているときに手が止まる。どこかを向いてしまう。

⑤いつもぼーっとしている

 

正解は全部です。

 

 

 

 

 

臨床現場での評価で、「注意の容量」が少ないっていうことありますよね。

 

どれだけあれば多くて、どれだけあれば少ないのでしょうか?

そもそも注意の容量ってなんなんでしょうか。

 

 

 

★「脳の限られた処理資源を有効に使うために、不要な情報には処理資源を割り当てずに、なるべく優先的に処理する」

⇒情報の選択的処理機能こそが「注意」

 

例えば

歩きスマホ をしている

 

 

この時に必要な情報は

スマホの情報+外界の情報(周りの人、車、道路の状態、音)など

 

ただ、スマホをみることに情報処理資源が集中してしまうと

➡結果として周囲の状況などに向ける資源が不足

 

 

 

 

 

 

「必要な情報処理を抑え、目的に合わせた情報処理を行う情報の選択処理機能」

この処理資源が、いわゆる「注意の容量」なんです。

 

一般的には

★スロットモデル:物体の数として4つの容量制約がある。

 

★リソースモデル:一定のリソースがあり複雑なものほど多くのリソースを必要とする(文だけのページと写真付きのページでは読み込む量が圧倒的に後者が多い みたいな感じです)

 

という説があります。

 

脳の領域としては

<<下頭頂間溝>>⇒スロットの役割

<<上頭頂間溝、外側後頭複合野>>⇒解像度(リソース)

 

どちらも個人差が多く、「慣れ」「習熟」によって大きく変わりますので、

 

「これが正常!」と決めるのは難しいようです。

 

それよりも大事なのは

注意の容量=いらないものを排除し、情報処理をしやすくする

⇒情報の選択的処理機能(中央実行系)の性能こそが「注意」といえます。

 

この時に働くのは

何か刺激があったときに、

※優勢反応の抑制(今やっていること、やりたいことを抑制する)

⇒他に大事なことが起きたときに止めることができる。

※順行干渉の抑制(ある記憶がそれ以前の記憶によって妨げられること)

⇒先にやったことが影響してこないようにする。

 

他の刺激が邪魔しないように抑制することが大事になります。

 

 

 

注意って奥が深いですよね。

 

まだまだ続きます。

 

注意障害についてまとめた その②

方向性注意の話

いわゆる半側空間無視

 

主として原因は頭頂葉になることが多いのですが

中脳とか視床でも出ることがあるようです。

 

大事なのは

「こころの中に構築した知覚心像についても同様に障害半球の反対側を無視する」こと。

 

つまり、見ているものを見落とすだけではなく、頭の中で思い出しているものも、無視してしまうってこと。

 

昔の人の実験で

街の風景を思い出して書いてもらったら、

教会の半分が欠けていたというようなこともあるそうです。

 

なぜこうなるのかというと

 

視覚処理をする過程と心象(頭・心の中で思い出す)過程で

用いる脳の領域が重なっているからなんです。

 

 

あと、方向性注意障害(半側空間無視)はなぜ左側ばかりなのか?

 

それは頭頂葉の働きに関係があります。

勘違いしやすのですが、

 

無視➡注意を向ける機能の障害 ではありません。

 

無視➡注意を向けたあと解放できない。のです。

 

右へ注意を向ける(左に向いた注意を解放):左右の頭頂葉 

左へ注意を向ける(右に向いた注意の解放):右の頭頂葉       

つまり左へ注意を向けるのは右の頭頂葉だけ。

なので左に症状がでてくるわけです。

 

不思議ですね。なんで左の時は片方しか使わないのか・・・。

だれか偉い人教えてください。

 

なお、この注意の切り替え/解放に関わる部分はほかにもあります。

それは頭頂間溝です。

 

 

頭頂葉⇒頭頂間溝にある指令がでます。

 

「注意を解除しろ!」

その指令がでたら頭頂間溝は向けている注意を解除して、

やっと別の方向に注意を向けコントロールするようになるんです。

 

 

注意のコントロールをいったん解除するように頭頂間溝に指令を送ること」で実現されるというややこしい過程をふむんですね。

 

 

 

先ほど「視床・中脳でも方向性注意障害が出てくる」と述べましたが、何故だかわかりますか?

 

それは視覚的注意の過程に原因があるのです。

頭頂葉の働き⇒注意を焦点から解放

 

中脳の働き⇒注意の焦点を移動させる(眼球運動も)

 

視床の働き⇒焦点に入った情報のうち必要な情報を増幅させる。

      (いらない情報はカット)

 

もうわかりましたね。

頭頂葉が障害:注意を焦点から解放できない

 

中脳の障害:注意の焦点を移動させられない

 

視床の障害:情報の取捨選択・調整ができない。

※例えるなら、テレビとラジオが同じ音量でなってて、どっちも聴き取れなくなる みたいな感じ

 

なお、視覚については他にも左右差があります。

 

右半球損傷:小さな形は報告するも、大きな形は無視する傾向がある

左半球損傷:大きな形は報告するも、小さな形は無視する傾向がある

 

つまり、右半球は広くて包括的なスケールを制御して、左半球は細かいスケールを制御する傾向にあるそうです。

 

まだまだ続きます

注意障害についてまとめた①

注意するという機能は

☆外部からの刺激に応じて、その方向に注意を向ける受動的な注意

☆自分の意思で気持ちを集中して何かをする(短時間)能動的な注意

☆気持ちを集中し、物事を成し遂げるときの主体的な注意

 

これらの注意をつくるためには、注意を構成する3つの機能が存在する

 

★注意の選択機能 

★注意の維持機能 

★注意の制御機能

➡この3つの機能は相対的に独立しています。

 

※※よくいう「選択」「持続」「分配」「転換」というのはこの機能が損なわれたらでてきます。

 

 

 

各機能について説明していきます。

 

 

「選択機能」

☆ある刺激にスポット(焦点)をあてる機能

多くの刺激の中から「唯一つの刺激」「刺激に含まれる唯一つの要素」に反応する能力を指す

 

★ある部分に随意的に注意の焦点を当てる

★ある刺激への反射的な選択反応を抑える

★外界からの干渉刺激を抑制す

 

簡単にいうとたくさんの邪魔・似たようなものの中から、探したいもの、選びたいものをみつける能力ですね。

 

「維持機能」

☆一定時間における注意の強度の維持機能に関与している

☆目標やゴールが時間の経過の中で維持され続けることの基盤・背景を構成する。

 

簡単にいうと、車の運転中に周りに気をつけ続けるような感じですね。

なお、この機能は覚度に強い関連を持つ機能といわれています。(覚度:様々な刺激状態の中で生体の反応性を保つ能力)

※持続的注意とも言います

 

 

「制御機能」

☆認知活動を一過性に中断し

     他のより重要な情報に反応(注意の変換)

★2つ以上の刺激に同時に注意を向けたりする

(分配性注意)など目的思考的な行動を制御する機能

 

簡単にいうと、テレビみながらご飯食べたり、電話をしながら料理したり、といった同時にいくつものことをしたり、勉強しているときに話かけられたらそっちを向いたりするといった感じです。

 

いわゆるダブルタスクをするのに必要な能力ですね。

 

 

この制御機能は、さらにいくつかにわけられます。

 

 

●注意を焦点化する能力

●注意を分割する能力

●注意を切り替える能力

●ワーキングメモリ・長期記憶のリンクを提供する能力

 

➡これらを行動制御あるいは抑制機能するのが

 

「「「★抑制メカニズム」」」です。

 

 この機能中枢は

前頭前野:課題遂行のための注意の維持

前部帯状回:競合する反応への対応

この2つはとても大事で、注意の勉強をしていると何度もでてきます。

とても大事です。大事なことなので2回言いました。

 

 

「選択・維持・制御」

これらを同時につかっていくことで、注意という機能は成り立っていきます。

 

その②へ続く

書籍レビューNO.3「フィジカルアセスメントがみえる」

書籍レビューNO.3「フィジカルアセスメントがみえる」

 

編集:医療情報科学研究所

発行:メディックメディア

 

わかりやすさ★★★★★

おススメ度★★★★★

 

この本は、職場でフィジカルアセスメントの勉強会をする時に

数冊買った本の中でもかなり使いやすかったです。

 

オールカラーで写真も多いのに値段もお手頃価格。

 

自分は急性期、地域包括病棟で働いているので、リハビリを行う際のリスク管理っていうのが本当に重要だと思っています。

昨日まで普通にリハビリしていた患者さんが、

次の日出勤したら亡くなってたということもたまにありますし・・・

 

バイタルは当たり前ですが、目と手で気付くことが出来る情報って、めちゃくちゃたくさんあるんですよね。

 

この本は写真とイラストもたくさんありますし、良く遭遇する疾患のほとんどが載っています。

○心臓

○腎臓

○肝臓

○呼吸器

○CVA

○貧血

○低栄養

などなど、、、

 

 

もちろん、各疾患を深く知ろうと思えば情報も足らない部分もありますが、そこは個別の専門書が必要ですが。

 

共通する症状もたくさんありますし、広く浅くわかりやすく整理されています。

 

なので、新人〜若手のセラピスト必携です!

というより、最低限知っておくべきです!

 

 

書籍レビュー No.2「注意と意欲の神経機構」

今回のレビューは

No.2「注意と意欲の神経機構」 です。

 

日本高次脳機能障害学会 教育・研修委員会 編

出版:新興医学出版社

面白さ★★★★★

分かりやすさ★★★☆☆

 

おススメ度★★★★☆

 

 

 この本は私が「注意障害」って何なんだろうと深く考えるきっかけです。

臨床現場で感じるのは

「この人は注意(機能)が悪い」

「注意障害があるから」

など、簡単に考えているセラピストの何と多いことか・・・。

 

 

教科書などで習う注意障害としては、いくつか書き方に差はありますが

「持続性」「転導性(転換)」「選択」「分配」

といった感じでしょうか。

 

他にも

半側空間失認(無視)などと間違えやすい「方向性注意障害」

「注意の容量」といったものもありますね。

 

この本は注意障害がそんな生易しいものではないというのを

まざまざと見せつけてくれます。

 

・「注意・意識・意欲」の関連

・セイリアンスネットワーク

・遂行制御ネットワーク

・デフォルトモードネットワーク

・観念失行との関連

・身体失認、病態失認との関連

・ワーキングメモリ―

など、まだまだ書ききれないほどの症状・徴候・機能に対して

いかに「注意」ということが関連しているのかが、わかります。

 

これまで聞いたことがないような単語が沢山出てきます(笑)

 

ただ、これを読んで次の日からリハビリの訓練や具体的なプログラムに

生かせるかというとそこは難しいかもしれません。

 

しかし、この内容を

知っているのと知っていないのでは

脳血管疾患の患者さんに対しての評価・診方が

確実に変わることは確かです。

 

 

若手セラピスト(特にOT)が「注意が悪い」「注意障害あります」

と言っているのを聞いてて感じることがあります。

例えば、PTの人がカンファレンスとかで
「歩行障害があります」とか言ってたら怒られると思うんですよね。

 

「注意障害」ということばも

同じようなことだと個人的には思っているので・・・。

 

ちなみにこの本を買ってから

「注意」関連の本を買いまくりました。

他の本の紹介もいずれ・・・

書籍レビューNo.1 「機能・活動・参加とQOLを高めるリハビリテーション薬剤」

 最初のレビューは

「機能・活動・参加とQOLを高めるリハビリテーション薬剤」

編集代表:若林 秀隆 先生 出版社:じほう  

                           です

読みやすさ★★★★⭐︎

おススメ度★★★★☆

 

「若林 秀隆先生について」

日本でリハビリテーション栄養という言葉・概念を広げた第一人者で、

これまでもたくさんリハビリ栄養に関する本を執筆されてます。

日本リハビリテーション栄養学会や日本サルコペニア・フレイル学会など様々なところで理事をされていて、この業界では有名人です。

 

<書籍レビュー>

 最近はフレイルやサルコペニアといった概念が健康番組やワイドショーなどでも取り上げられ、一般に広がってきました。主観ですが、一応薬剤に関しても記載はありましたが、いままで「リハビリ栄養」が中心。

 特に自分はリハビリ職なので、余計に運動・栄養といった部分に目をむけて、他のことは他職種に任せっぱなしでした。

 

でも、

・「食欲がない」なくてご飯が全然食べられてません・・・とか

・ずっと「下痢」をしてて、動くのも嫌がって全然リハビリできない・・・とか

・夜眠れなくて、いざリハビリしようとするときには寝てる・・・とか

 

色々なことがあってリハビリが進まないといったことは日常茶飯事。

 

でも、リハビリはしないと廃用も進むし、リハビリしないと○○がとれないし。

ただ「患者さんのやる気がない」「リハビリ意欲がない」で終わらせてしまうのも問題がありますよね。

 

この本には、臨床現場でよくみる

「ふらつき・転倒」

「パーキンソン症状」

意識障害・認知機能障害」

「せん妄」

「食欲低下」

といった症状を引き起こす薬剤についてもいろいろと記載されてます。

 

 

また入院している人は当たり前ですけど「病人」なので、

腎臓・心臓・肝臓・肺・糖尿・血管の問題・脳梗塞脳出血など

一つないし複数の内部障害をもっているのが当たり前。

複数の薬を飲んでる人がほとんど。

「ポリファーマシー」といったリスクにもつながります。

 

 あくまで、自分はセラピストなので薬剤に関して何かできるわけでありません。

 

でも「この薬飲んでるんだ」とか「この薬飲んでたらこんなリスクがあるな」

など病棟での生活場面(転倒とか生活リズム・誤嚥リスク)などについて

看護師さんと相談したり、主治医の先生とか薬剤師の人に聞いたりできるようになりました。

 

 

 

自分が体験した悲しいエピソードがあります。

 

とある高齢の男性患者さんで入院途中からご飯をほとんど食べなくなってきた方がいました。

 

本人によると

「食欲がない・・」「食べたくない」

 

といった返事ばかり。

 

どんどん体重が減っていったので、栄養補助食品などを提供する・家族の方に好きなものを持ってきてもらったりしましたが、なかなか改善しませんでした。

 

色々調べてみると

その方が飲んでいる薬の副作用に「食欲低下」の文字が・・・。

これだ!と思ってDrに提案したのですが・・・

受け入れてもらえず・・・。

とても悔しかったです。

 

 

こんな体験を他の患者さんがしないように

全てのリハスタッフがこの本を読んで、

他職種連携の第一歩を踏み出してほしいと思います。

 

リハビリ書籍レビュー始めました

大阪の病院で働く中堅リハセラピスト(OT)です

当たり前のことですが、医療現場って常に勉強!勉強!・・・。

 

現在私の本棚には数百冊の書籍(医学書)が入っています。

 

新品で買ったり、中古で買ったりとはしていますが

 

言いたいのは「医学書・専門書は高い!!」ってこと

 

安くても3000円・・・高いと1万円を超えるのはざらです。

 

そのくせ、「失敗した・・・」とか「面白くない」といったものもある。

 

今回、リハビリ関連の書籍レビューを始めましたので、

 

買い物前の参考にしていただければ幸いです。